COLUMNコラム
 

          
第82回 (2004年7月17日)
「岡野だと思った!」


7月17日   ○2−1   ジェフ市原(駒場)
 
結果を見たから言うわけじゃない。道々、暑い中を自転車に乗ってダラダラ汗を流
しながら、すでに予測していた。
「こういう日は岡野が決める」
  理由ははっきりしている。こんな蒸し暑い日は、先発で出た選手は後半途中になっ
たらバテバテだ。そこへ、スーパーサブの岡野が入って、ビュンビュンと走り回った
ら、とてもジェフのDFじゃついていけまい。最後は、岡野がGKと一対一になっ
て、一度はドジを踏んでハズすのだが、二度目のチャンスでバッチリ決める。
  この一対一、というあたりは予想通りにはならなかったが、岡野が決める、という
点については見事に当たってしまって、私は個人的にとても嬉しかった。だから、
「みんなも驚いたかもしれませんが、ボクも驚いた」
 というヒーローインタビューの岡野発言には、私は同意できない。予想した通りの
ことが起きたのだから。もし「toto」に、「これゲームの決勝点を挙げるのは誰
か?」という項目があれば完全に正解だった。
  ホントに途中まで、まるで座っているだけで汗ダラダラの気候と同じくらいに不快
指数のムチャクチャ高い試合だった。引分けでもいいジェフはやる気なさげにやたら
とバックパスを多用するし、レッズはゴール前に迫っても決め手がないし。絶対にP
Kにしか見えない永井が倒されたシーンも、審判はまったく反応してくれないし。
  あげくにカウンターでジェフに一点入れられたところでは、アタマに来て、もう帰
ろうかと思った。Tシャツはベチャベチャしてるし、こんな試合見せられたなら、
さっさと帰ってシャワー浴びて着替えた方がいい。
  でも、思いとどまって残っていて良かった。それから先がまるで「夏祭り」みたい
になったのだから。長谷部のゴールで、やや不快指数を忘れ、岡野のゴールで、ほと
んどレッズ・サポーター側は盆踊り状態だ。
  岡野というのは、もうガッツ石松に負けないくらいの「伝説の男」になってしまっ
たな。彼がいると何かが起こる。交替で永井が出てもあまり盛り上がらない観客席
が、「岡野」のコールを聞くと、なぜかドッと盛り上がる。これってとても不思議な
のだ。恐らく、現状におけるFWとしての総合力は永井のが上なのだろうに、岡野に
は、技術を超えた「何か」が確実にある。出てくるだけで嬉しくなっちゃうもんね。
  お笑いの世界でも、こういう技術以上に、強烈なキャラクターでしぶとく生き続け
ている人はいる。たとえば「アホの坂田」とか。岡野を坂田利夫と並べると怒るレッ
ズ・サポーターもいるかもしれないけど、どこかイメージが私の中では共通するの
だ。「走り」と「アホ」、これ以上ない確固たる一発芸がある所が非常に近い。
  岡野には、あと何年かの現役人生、あくまで一発芸にこだわり続けて、最後まで走
り続けてもらいたい。
 それにしてもオリンピック落選直後の鈴木啓太、山瀬も注目ではあったが、それ以
上に気になったのがアルパイだ。
 こっちは、岡野のゴールとは違って、本当に驚いた。闘莉王以上に、どんどん前に
出て攻撃参加するんだから。「出たがり」DFが前に行った後を平川や山田や酒井が
カバーしているシーンが何度もあった。
  これは試合を見てる分にはとても楽しいのだが、勝敗という点では果たしてどうな
んだろうな? 守りの要が二人も前に出て、うまく攻守の切り替えができるんだろう
か? ずっと押しまくった末にカウンター決められて1ー0、なんて試合が出てくる
んじゃないかな。後ろの席のオッサンも、
「闘莉王もアルパイも、出てくるのはいいけど、後ろにいる時には確実なプレーをし
てほしいな」
 と苦言を呈していた。
  でも、何の特徴もなく、ただ後ろで張ってるだけの選手よりも、キャラははっきり
してるし、プロとしては面白い。第二ステージは、このDF二人の「出たがりイケイ
ケコンビ」がどんなプレーをするのか、大注目になってしまった。
 また8月以降も楽しみだな。


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山中 伊知郎(ヤマナカ・イチロウ)
昭和29年、東京生まれ。
早稲田大学法学部卒。
18歳からハゲはじめ、頭を剃る。
「スケバン刑事」の脚本家、テレビ番組の構成作家などを転々とした後、
フリーライターに。
関根 勉率いる劇団「カンコンキンシアター」の一員でもある。

TBSラジオ
「永六輔の土曜ワイド」にもレギュラー出演中。

主な著書
「関根 勤は天才なのだ」(風塵社)
「浦和レッズ至上主義」(風塵社)
「チョットいい犯罪」(図書新聞)
「頭髪のすべてがわかる本」(日本実業出版)

浦和市民であり、もちろん熱狂的浦和レッズファン。

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