COLUMNコラム
 

          
第77回 (2004年5月15日)
「公衆電話がなくなった日」


5月15日   △3−3  ジェフ市原(駒場)

  ついにこの時が来たか! とガク然としてしまった。
  ただし、これはレッズの話ではない。駒場の正面スタンド裏二階通路にあった公衆
電話のことだ。私、携帯電話を持たないのがモットーで、駒場が増築されてから10年
近く、ちょくちょくあの電話を使っていたのだが、今回、知人に連絡しようとした
ら、とうとう撤去されてしまっていた。「携帯絶対主義社会」がついにここまで来た
か、と改めてガックリしたのだ。何だか、古い友人が遠くに引っ越しちゃったみたい
で、とても寂しい。
  だが、その寂しさをぶっ飛ばしてくれたのがトゥーリオだったな。
 まるっきり冴えない前半戦は体全体でイライラを爆発させていたトゥーリオの本領
発揮は、PKを取った瞬間にボールを奪い取り、「オレが蹴る」と走り出した瞬間
だ。
  私たちのまわりの客席もざわめいた。
「おいおい、トゥーリオがボール持ってるぜ」
「まさかあいつが蹴るんじゃないだろうな」
「岡野に蹴らしてやれよ、あいつまだ無得点なんだから」
「永井がいるだろ」
  そんな外野の声なんかまったく気にする素振りもなく、トゥーリオはさっさとボー
ルをセットして、自分で決めてしまった。
  ラテンだねェ。カーニバルだね。日本的な義理と人情のシガラミにはまったく無頓
着。前に行きたかったら行く、守りたかったら守る、自分の思うままに行動して、決
してチームワークを乱さない。
  マッチディにも書いてあったが、ホント、トゥーリオを見ているだけで90分飽きが
来ない。エメルソンが引っ込んで心配になったが、今年のレッズは、ひとり抜けても
空間が薄くならないくらいに強烈なキャラクターが揃っている。アンパンマンが抜け
ても、食パンマンやバイキンマンやよりどりみどり揃ってるから、退屈する時間がな
いのだ。
 エメの代わりに入った岡野がまた、十分に楽しませしてくれたから。得意の、自分
から相手DFを抜いてまた自分のパスを出すマイセルフパスこそ不発には終わった
が、右へ左へと走り回り、あまりキレイではないが、本年の初得点も決め。
  できれば、あの岡野の初得点を決勝点にして、3−2で勝ちきり、岡野に勝利者
ヒーローインタビューを受けさせたかった。それは、90年代を岡野とともに歩み、
ジョホールバルの歓喜のゴールをも共有してきたレッズ・サポーター全員の思いだっ
たろう。
  岡野には思い出がとにかく多い。きょうもまた、その一ページが新たに加わるは
ず、であった。
  だから、後半、ロスタイムが4分と表示された時には、客席からも、
「4分もあるのかよ・・・」
「長い!長すぎるよ!」
 不安のため息がジワーッと広がっていった。あれ、けっこう精神的なショックが大
きいものだ。「あと3分」と「あと4分」が微妙に違う。
  その不安はあっさりと的中し、いったい何がどうしたのかわからないままにPKを
取られてしまう。
  まいったなァ。せっかく岡野復活のハッピーエンドの筋書きが出来かかっていたの
に、すべてはワヤになってしまった。
「勝てると思ったら引き分けちゃったよ」
 そうウチの女房に連絡を入れようかな、と公衆電話の方に行ったら、改めて撤去さ
れていたのを思い出した。やっぱりこれからは、携帯を持たない人間は人間扱いされ
ない時代になってきてるのかな。


「山中伊知郎コラム感想掲示板」


皆さんの感想が山中さんのモチベーションとなり次のコラムとなります。
是非とも感想は「山中伊知郎コラム感想掲示板」までお願いします。
(山中さんも見て、書き込みをしております)

<無断転用・転載を禁じます> 

最新刊『浦和レッズ絶対主義!

↑こちらをクリックすれば買えるようになりました

2002年・Jリーグ第2ステージ、惜しくも優勝を逃した
我らが浦和レッズ。
本書は、著者を含めたサポーター、関係者たちが、
どうジタバタし、どう歓喜し、どう落胆していったかを
克明に綴った「地域密着型人間ドラマ本」である。
長崎出版から好評発売中 


        
山中 伊知郎(ヤマナカ・イチロウ)
昭和29年、東京生まれ。
早稲田大学法学部卒。
18歳からハゲはじめ、頭を剃る。
「スケバン刑事」の脚本家、テレビ番組の構成作家などを転々とした後、
フリーライターに。
関根 勉率いる劇団「カンコンキンシアター」の一員でもある。

TBSラジオ
「永六輔の土曜ワイド」にもレギュラー出演中。

主な著書
「関根 勤は天才なのだ」(風塵社)
「浦和レッズ至上主義」(風塵社)
「チョットいい犯罪」(図書新聞)
「頭髪のすべてがわかる本」(日本実業出版)

浦和市民であり、もちろん熱狂的浦和レッズファン。

●「山中伊知郎は語る レッズよ、勝て!」TOPへ
このコーナーへのご意見・ご要望・ご質問は下記までお寄せください。
e-mail : kaname@murata.name
        

浦議TOPへ