COLUMNコラム
 

          
第76回 (2004年4月18日)
「私は反対する!」


4月18日   ○4-1  大分トリニータ(駒場)

最初に、はっきりと結論をいわせてもらう。
  私は、きょうのような「応援ボイコット」には反対だ。応援拒否の姿勢をとるな
ら、あえてスタジアムには来るべきではないと思っている。ずっと応援のないバック
スタンドを見ているうちに、次第にムラムラと怒りさえこみ上げてきた。お陰で、帰
路、とても3点差で快勝したとは信じられない、言いようのないイヤーな気分に襲わ
れつづけた。
 イヤな気分の第一を書いておこう。
  一部サポーターが、自分たちは応援をしないと決めるのはいい。だが、なぜわざわ
ざ他人にまで働きかけて「応援しないでくれ」という権利があるのだろうか?
  スタジアムにつくなり、横断幕のないスタンドにビックリして、さらに先発メン
バー発表でもいつものブーイングも、声援もないのにまたまたビックリして、私は
バックスタンド側にいる知人に連絡をとった。そしたら、あっち側には、「最近の
レッズの状況に喝を入れるため、応援はやめましょう」みたいな張り紙がしてあった
という。正面スタンドにはそれはなかったため、よく事情が飲みこめなかったが。
  結局、その張り紙が効いて、きょうのバックスタンドはいつになく実に静かな「観
戦風景」となったが、本当にあそこにいたサポーターたちは、それで満足したのだろ
うか?
 チームのふがいなさを怒るのは、いい。でもきょうの試合は違ったではないか! 
最後のしょうもない1点はともかくとして、課題のDF陣もそこそこには踏ん張り、
エメルソンだってハットトリックを決め、あの岡野だって意外に小技のうまい所を見
せてくれたではないか!
 なぜそれを素直に喜んであげられない! 少なくとも点をあげた時くらいは旗くら
い振ってあげるのが礼儀ではないのか?
 私は、本当はバックスタンドの観客の中にも、エメが2点目、3点目と決めたあた
りで、素直にエメルソン・コールを送って喜びたい人たちはいたと思う。だが、それ
を許さない「何か」があったのだと思う。
  現に帰り際、バックスタンドから出てきた女のコが、携帯電話でこんな話をしてい
たのを小耳に挟んだ。
「つまんないの! せっかく応援しに来たのに、ダメだっていうんだもん」
  あえて誰が「ダメだ」といったのかは知らない。しかし、応援したい人間には、や
らしてやればいいじゃないか! オレたちが決めたことは全員が守れ、と強制するの
は、そりゃ北朝鮮と同じだ。
 駒場のスタンドも、いつもいつも同じ人たちばかりが来るわけではない。一度は有
名なレッズの熱狂応援を見たり、それに加わったりしたいと初めてやってきたサポー
ターだっていたはずだ。そういう人たちにとっても、きょうみたいな不完全燃焼の応
援を味わわせるのはかわいそうだった。
  やがて、エメがハットトリックを決めたあたりで、ようやくオーロラビジョン側の
サポーター席付近で少し旗が振られ、声援も起こった。だが、それは、ほんのわずか
しかいないトリニータ・サポーターの応援にも負けるくらい力の弱いものだった。
「きょうは応援やんないんだね」
 私のすぐ横の席にいた子供も、寂しそうにつぶやいていた。
  地上波・TBSの放送のある試合をあえて狙った点も、どうも割り切れなかった。
まるで、全国の人たちに、これ見よがしに「レッズの主役はサポーターだ!」と主張
しているみたいで、やはりイヤーな感じだった。
  サッカーの主役はやっぱり選手なのだ。サポーターは「12番目の選手」と呼ばれる
くらいだから、主役のひとりかもしれないが、あくまでも数多い主役の中のひとりに
過ぎない。「オレたちが応援しているから、お前らも試合が出来る」式の、サポー
ター主導の考え方は、傲慢に過ぎる。かつて、私は味方のチームに対しても「ヘタ
!」とケナしたFC東京サポーターに傲慢さを感じたが、きょうのレッズ・サポにも
同じものを感じた。
 サポーターは評論家ではない。ゴチャゴチャといろいろ言う前に、味方が点取った
ら、素直に喜ぼうよ。それがイヤなら、誰かにチケット譲ってスタジアムに来なけれ
ばいいじゃないか。駒場なら、チケット買いたくても手に入らなくて困ってる人はた
くさんいる。
 だいたい、なぜこの時期に、そんな「応援ボイコット」をやるのか、その理由自体
がよくわからない。別にダントツのビリをつっ走ってるわけでもないし、監督の采配
が疑問だらけというわけでもない。攻撃重視とはっきり謳っているのだから、前回の
ような3−4
の試合になるのもある程度はやむを得ない。私なんか、攻撃陣の層が厚くなって、毎
回、試合見るのが去年よりずっと楽しいくらいだ。
  93年、94年のレッズを知ってる人間からいわせれば「天国」みたいなものだ。もし
チームがふがいなかったら「応援ボイコット」というのなら、あの頃は、それこそ一
年中全試合ボイコットだ。みんな、レッズへの要求が高くなりすぎているのかな。
  ついでに書いておくと、バックスタンドが静かな分を取り戻そうとしたのか、きょ
うの正面スタンドはいつも以上に盛り上がっていた。あるいは、きょうのような試合
展開なら、「組織的サポーター」がいなくても、「個人型サポーター」の声援だけ
で、そこそこ賑やかになるものかもしれない。


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山中 伊知郎(ヤマナカ・イチロウ)
昭和29年、東京生まれ。
早稲田大学法学部卒。
18歳からハゲはじめ、頭を剃る。
「スケバン刑事」の脚本家、テレビ番組の構成作家などを転々とした後、
フリーライターに。
関根 勉率いる劇団「カンコンキンシアター」の一員でもある。

TBSラジオ
「永六輔の土曜ワイド」にもレギュラー出演中。

主な著書
「関根 勤は天才なのだ」(風塵社)
「浦和レッズ至上主義」(風塵社)
「チョットいい犯罪」(図書新聞)
「頭髪のすべてがわかる本」(日本実業出版)

浦和市民であり、もちろん熱狂的浦和レッズファン。

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