COLUMNコラム
 

          
第75回 (2004年4月10日)
「薄気味悪い試合」


4月10日  ○2-1 ヴィッセル神戸(駒場)

うっかりしてた。きょうがアルビレックス戦のチケット発売日だったのを忘れてい
て、試合が終わってあわててロッピーに買いに行ったら、どの席もとっくに「完売」
になっていた。こんな調子じゃ、朝10時前に並んでも無理だったか。新潟と浦和の応
援合戦をナマで見たかったのだが・・・。
  そらそうと、あのカズの坊主頭はいったいどういう意図なのだろう? ただでさえ
ヴィッセルはスキンヘッドが多いので、比叡山の僧兵集団みたいで気持ち悪かった。
  どうも、試合全体もその「薄気味の悪さ」にずっと支配されていた気がする。
  だいたい、私の後ろの席の、カンに触る金切り声をあげて応援する女性客が久しぶ
りに来てた。彼女が「イケイケ」とも「ソコソコ」ともつかぬ、ネコが暴れて叫んで
るような奇声を発すると、背筋がゾッと冷たくなる。
  でもって、いきなりPKで1点。こういう、相手からもらったような「ごっつぁん・
ゴール」は最後まで守れたためしがない。やだな、やだな、いつか同点にされそうだ
な、と思いながら前半を終えたら、突然、ハーフタイムショーで、イギリス人歌手の
独唱がはじまった。どうも、いつもの駒場とは異質なムード。奇妙に心落ち着かない
のだ。
  その落ち着かない雰囲気が、後半、いきなり出た。浮き足立ってるヴィッセルDF陣
のお陰で、立て続けに訪れたレッズの、キーパーとの一対一のチャンス。ところが、
せっかくの絶好の得点機をどっちもはずしてしまうのだから、薄気味悪さはさらに増
幅されていく。いかん、この試合は負けるぞ、と。
  そしたら、危惧していた通りに同点にされる。シロート目で見ても、坪井を除くDF
陣がどこか落ち着きがなく、けっこう相手の攻撃陣にいいように動かれるのだから、
点を取られるのはいたし方ない。それまでよく無得点ですんでたと思うくらいだ。
 やっと1点を取り、岡野も投入してチームの流れがかわり、ようやく薄気味悪さは
薄らいだと安心したら、また試合終了直前になって、事態は薄気味悪くなってくる。
ヴィッセルのGKも、いきなり攻撃参加なんて、そんな気味の悪いことはやめてほし
い。キーパーに同点弾を決められたらカッコわりー、などと余計なことを考えてし
まったではないか。  最後まで押されに押され、結局、この薄気味悪い試合を救って
くれたのが、早めにホイッスルをふいてくれた審判だったのも象徴的だった。
  帰りがけ、前の二人組が、
「ニキフォロフはいつ出てこられるの?」
「ゴールデンウィークには間に合うんじゃないの」
「早くして欲しいよな。心臓がもたない」
  なんて会話をしていたが、私も同感だ。
  たとえてみると、一万円札一枚しか持ってないのに高級寿司店に入ったようなもの
で、払いが不安で、おちおち食事も楽しんでいられない。いつバックにボロが出るか
わからないから、得点シーンも素直に楽しめない。
  せめて財布に十万は入れておきたい。


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山中 伊知郎(ヤマナカ・イチロウ)
昭和29年、東京生まれ。
早稲田大学法学部卒。
18歳からハゲはじめ、頭を剃る。
「スケバン刑事」の脚本家、テレビ番組の構成作家などを転々とした後、
フリーライターに。
関根 勉率いる劇団「カンコンキンシアター」の一員でもある。

TBSラジオ
「永六輔の土曜ワイド」にもレギュラー出演中。

主な著書
「関根 勤は天才なのだ」(風塵社)
「浦和レッズ至上主義」(風塵社)
「チョットいい犯罪」(図書新聞)
「頭髪のすべてがわかる本」(日本実業出版)

浦和市民であり、もちろん熱狂的浦和レッズファン。

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