COLUMNコラム
 

          
第66回 (2003年10月1日)
「疲労感がつのるプチ旅行」



10月1日   ●0−1  清水エスパルス(日本平)

  行っちゃいましたよ、日本平。
あの仙台戦でボコボコッと6点もとったんだもの、
あのままの勢いでいったら今年こそナビスコカップの優勝シーンが
見られるのではないか、
とりあえずさして調子の出てないエスパルスくらいはあっさり撃破してくれる
ことだろうと、わざわざ清水まで行きましたね。

  新幹線が走ってる分、鹿島あたりよりはずっと交通の便もいいが、
やはりプチ旅行には変わらない。
こういう半端な移動は疲れるから、ぜひ勝って、
その疲れをふっ飛ばしてもらいたいものだと、
私はあえて余計に体を疲れさせる意味もあって、行きは
鈍行で清水まで行ってしまった。
(本音のところは、少しは交通費を安くさせたい気持ちもあったが) 
午後2時半くらいに出る東京発静岡行きの電車に乗ると、
ウトウトしているうちにほぼ3時間で乗り換えなしで清水に着く。
すでに日が暮れてる。思いのほか、
レッズのユニフォームを着たサポーターと出会わない。準決勝といっても
ナビスコカップでは、まだまだ盛り上がらないか。

  駅から5分くらい歩いたバス停留所からバスでサッカー場までは20分程度。
ノンストップの浦和のシャトルバスとは違い、
4つか5つくらいの停留所で客を乗せていってから会場につく。
市内に住むエスパルス・サポーターが途中からの乗客だ。
日本平の周辺は、どちらかといえば埼スタより駒場といった感じで、
人家が隣接している。

 6時20分ころに会場についたら、すでに先発メンバーの発表を
している最中だった。レッズのホームゲームに比べて20分以上早い。
静岡は埼玉よりも気が早い人が多いのだろうか。
  売店の並んだ通路を通りぬけて、バスの停留所とまったく反対側にある
アウエー側のサポーター席につく。
いつもに比べてサポーターの集まりはやはり少ないか。スピーカーで、
「サポーターのみなさんは、もっと前に来てください」
 なんて、あちこち散らばってるサポーターを中心に集めようとしてたくらいだか
ら。こういう光景は鹿島でも柏でも見なかった。
やっぱり準決勝でもナビスコカップなんだな。 

エスパルスのサポーターも、反対側のゴール裏、ニ階席のすべてを
埋めきれず、左右にあいたスペースがあった。
後で観客数が発表されたら8千人ちょっと。
ジュビロ・アントラーズでも1万入らなかったらしいし、だいたいこの程度か。

  それにしても、エスパルスのホームでの応援を初めてみたが、
みんな、よく歌って踊るなァ。
試合が始まるまでの30分くらい、ほとんど休むことなく、応援の練習をや
りつづける。特に「オーレ!」っていうのが好きらしく、
やたらとオーレオーレいってる。
チームカラーのオレンジとフィットして、妙に陽気で開放的なのだ。
  疲れそうだが、あれ、なかなかいいな、と思った。FC東京あたりの、
「オレはサッカーに詳しいんだぜ」といったイヤラしい自尊心が
ハナにつく応援と比べて、エスパルスのそれは実に率直だ。
別に対戦相手をくさす訳でもなく、リオのカーニバルよろしく、
陽気に踊って盛り上がってる。さすがにレッズのサポーターの中には、
「いつまでやってんだよ」とシラけてた人もいたけど。
それと、エスパルスが応援で三都主を呼ぶときは、
「サントス」ではなく、「アレックス」を使うのを初めて知った。
山本リンダの『狙い撃ち』のメロディーを使って応援するチームは多いが、
エスパルスの「のぼり、のぼり、沢登」というのは、
聞いてて一番ハマってる気もしたな。 

  試合開始直前になって、俄然、レッズ側の応援も賑やかになったが、
弱っちゃったのは応援でみんなが動くと、
スタンドがガタピシ揺れること。最初は地震があったの
かと思っちゃったくらい。日本平のこのスタジアムって、
相当老朽化しているのだろうか?

 試合は序盤からスピーディーな展開で一進一退。
エメルソンも好調をキープしてるようで、
ちょっとくらい無理な体勢からでも強引にシュートに持ってく。この姿勢が
いいやね。いくらゴール前に来たって、シュート打たなきゃ点は取れないんだから。

  エスパルスで、さすが、と感じたのは三都主だ。ボールをキープすると、
なかなかレッズに奪われない。
それでスルスルッと左サイドを上がってチャンスを作る。
その一連の動きがちゃんと絵になってる。駒場なんかで見た時は
あまり印象がなかったのだが、
ホームのユニフォームを着ると動きが良くなるのかな。

  攻守の切り替えが早く、テンポのいい試合運びだったが、
なかなか点が入らず、私はつい手にしていたメモ帳を下に落としてしまい、
拾おうとしてほんの数秒、ピッチから目を離した。
  何とそこでアンジョンファンのゴールが決まってしまったのですね。結果的にこれ
が本日の唯一の得点だったから、
私はわざわざ長い時間と費用をかけたのにもかかわらず、
ゴールシーンはついに目にしていないわけだ。正直、私はヘコんだ。
レッズが点を取られたのと、そのシーンが見られなかったのとで
二重にヘコんだ。
あとで、都築がうっかり正面のボールをそらして得点にしてしまったと
聞いて三重にヘコんだ。

 それからはどうも攻撃は微妙にかみ合わなくなってしまった気がする。
個人技に流れたわけでもなかろうが、みんなどこか単発なのだ。
チーム全員が押しあがっていって、次から次へと攻撃をしかける、
という具合にはなっていかない。ニキフォロフの
FKなんかはさすがに見ごたえがあったが、入らないとな。

 後半になると、試合の展開もそうだが、帰り、ちゃんと家まで帰れるのかも
心配になってくる。
一応、静岡駅から新幹線に乗るとしても10時くらいので行けないと、
東京から南浦和経由の武蔵野線の東浦和に行く終電に間に合わない。
試合が9時に終わるとして、清水駅までならバスで約20分。
静岡駅までなら約40分。ただし、清水だと、
また東海道線で静岡に出なくてはならない。

  静岡行きと清水行きとどっちのバスに乗るかな? 
新幹線は自由席のチケットしか買ってないが、満員だったらヤだな、
とかそういうことを考え出すと、なかなか試合観戦に集中できない。
これはバスに少しで早く乗れた方がいいや、と後半途中では、
わざわざレッズ側のサポーター席から、バス停に近いエスパルス側の一階に
席を移動してしまった。

 試合そのものが膠着状態で、どうもワクワクできなかったのももちろんある。
  試合終了とともに出口に向かったら、
もう先に何十人もの人たちが出口からバス停に向かっていた。
道路の渋滞も考えて近いところを、と清水行きのバスに乗り込んだ
ら、勝利の雄たけびか、花火が賑やかに打ち上げられていて、
ちょっとしたお祭り気分。
  清水から静岡までを鈍行で行き、最終のこだまにも乗れて、
どうにかこうにか終電で家に帰れる見こみはたった。
危惧していた満員の恐怖はなく、自由席はほとんどガラガラだったけど。

  しかし、疲れる。こういうプチ旅行で、決め手なく0−1で負けるようなゲームが
一番疲れる。いっそ、ドカンと大負けの方がストレスはたまらないものだ。
  8日は私んチから自転車で30分もかからないような駒場。
今度は、2−0くらいで、わざわざプチ旅行でやってきた
エスパルスのサポーターが、「これじゃ疲れるよ」
 と弱音を吐くような試合をやってほしい。






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山中 伊知郎(ヤマナカ・イチロウ)
昭和29年、東京生まれ。
早稲田大学法学部卒。
18歳からハゲはじめ、頭を剃る。
「スケバン刑事」の脚本家、テレビ番組の構成作家などを転々とした後、
フリーライターに。
関根 勉率いる劇団「カンコンキンシアター」の一員でもある。

TBSラジオ
「永六輔の土曜ワイド」にもレギュラー出演中。

主な著書
「関根 勤は天才なのだ」(風塵社)
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「チョットいい犯罪」(図書新聞)
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浦和市民であり、もちろん熱狂的浦和レッズファン。

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