COLUMNコラム
 

          
第65回 (2003年9月23日)
「にぎやかな正面(メイン)スタンド」


9月23日      △2−2  ジェフユナイテッド市原(駒場)

 試合はともかく、にぎやかだったのが正面スタンドだ。
いつも座っている二階のSA席、別に普段と変わりないはずなのに、
休日でエネルギーがたっぷりなのか、
偶然、きょう揃った私のそばの観客がヤジを飛ばすのが
好きな人が多かったのか、はっきり言って、うるさいくらいににぎやかだった

 その声の飛ばす出足たるや、どことなくタラタラして
あまり前にも出ようとしない前半の山田の動きより、よほど勢いがいい。

 前半、私のすぐ後ろの席の若い男性の声が、特に派手だった。しかも内容は90%以上が主審の穴沢批判
 エメルソンがイエローを取られたりするシーンで、
「穴沢! ここをどっちのホームだと思ってるんだ!」
 といってるあたりは、他のヤジとあまり変わらないのだが、
なぜか途中から、単にミスジャッジを怒るだけでなく、
審判としての姿勢まで攻撃し始める。
  レッズ側の、ジェフ選手をちょっと押したくらいのファウルともいえないような動
きを審判がファウルと判定するやいなや、
「穴沢! そんなのをファウルに取ってるから、
日本の選手はフィジカルが弱くなるんだ!」
「穴沢! そんな甘っちょろい判定は海外じゃ通用しないぞ!」


 もし私が穴沢主審なら、「余計なお世話だ」と言いたくなるが、
彼のヤジはさらに深い。
「穴沢! 所詮公立学校の教師じゃ、甘いのは仕方ないか!」
 おいおい、この男、主審の本業まで知ってるよ、と少しビックリ。
要するに、サッカー通なんだな、この人は。

  後半は、さすがに審判批判は減ったが、坪井が林に振り切られたりすると、
すかさず
「林ごときに振り切られるようじゃ、日本代表もレベルが低いぞ!」
 どこか理屈が先行しているタイプなのだ。

 もう2、3列後ろで、塩辛い声を張り上げているオジさんは、もっと単純だ。
  穴沢主審がジェフ寄りの判定をすれば、
「シンパーン! お前をコ■す!」
 だし、田中がボールをキープして前に向かっていけば、
「タツヤ! 叩き込め!」
 だし、すこぶるわかりやすい。へんに考えないですむ分、
ヤジはこういう方が聞いてる側も楽だな。

  一番困っちゃうのが、6列くらい後ろだろうか、女性の悲鳴のような金きり声。
レッズを応援しているのはわかるが、
いったい何を言ってるのかはさっぱりわからない。
ただ、人間の耳が感知できる音でこれ以上の高音はないんじゃないか、
と思えるほどのキーキー声で、15秒おきくらいに叫んでいる。
 
私の右隣に座っていたウチの女房も、ついあまりの声にポツリと
「まいっちゃうなァ」とつぶやいたら、まったく見ず知らず
左隣の女性が「そうですよね」と思わずうなずいた、ってくらいヒドい。
どんな人があんな声を出すのか、と試合終了直後、
チラッと振り向いてその顔を見たくらいのものだ。
いや、顔をみたら30代くらいのごく普通の女の人に見えたが。

  試合そのものはスコアが示す通りに可もなく不可もなし。
なぜかピッチよりもスタンドの方が白熱した印象の一戦であった。
  




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山中 伊知郎(ヤマナカ・イチロウ)
昭和29年、東京生まれ。
早稲田大学法学部卒。
18歳からハゲはじめ、頭を剃る。
「スケバン刑事」の脚本家、テレビ番組の構成作家などを転々とした後、
フリーライターに。
関根 勉率いる劇団「カンコンキンシアター」の一員でもある。

TBSラジオ
「永六輔の土曜ワイド」にもレギュラー出演中。

主な著書
「関根 勤は天才なのだ」(風塵社)
「浦和レッズ至上主義」(風塵社)
「チョットいい犯罪」(図書新聞)
「頭髪のすべてがわかる本」(日本実業出版)

浦和市民であり、もちろん熱狂的浦和レッズファン。

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