COLUMNコラム
 

          
第60回 (2003年7月12日)
「意外性のないおとなしいチームに」


●0−1  FC東京(埼玉スタジアム)

  負けるのはどこ相手でもイヤだが、FC東京相手はイヤさが倍加される。
あの、アウエー側ゴール裏の右側部分だけに密集するFCサポーターは、
どうも相変わらずの、「オレたち、サッカー知ってるぜ」的なノリたっぷりの
イヤミ応援。後半のアマラオ登場と同時に「ナンバーワン・コール!」で盛り上が
るなんざ、イヤったらしくて、鳥肌たってきたね。
  ところが、こんなサポーターの応援するチーム相手にちっとも勝てないのだか
ら情けない。別に「東京」って名前にコンプレックスがあるわけでもなかろうに、
どうしてここまで勝てねんだろ。サポーターも最初は思いっ切りのブーイング攻勢
で押してたけど、試合が終わってみたら、またFCサポーターに、勝利を雄叫びを
上げられてしまった。

  悔しいね。敗北を見届けたと同時にとっとと席を立ったが、スタジアムの外に出て
もまだあの雄叫びが聞こえてくるのが、さらに悔しさをつのらせる。
 だが、試合そのものを見れば、とても勝てるとは思えなかった。それなりに
攻めてるようなシーンはたくさんあったとしても、決定的に崩したシーンは
皆無だったから。最後に1点とられたのはアンラッキーとしても、せいぜい0−0
のドローがいいところ。

  エメルソンが出場停止になって、改めてその存在の重さに気づかされた試合
といっていい。たとえはヘンだが、エメルソンのいないレッズは、
「天然ボケのいないお笑い集団」みたいなチームになってしまう。
吉本新喜劇でも何でもそうなのだが、コメディーというのは計算通りに芝居の
できる演技力のある役者が揃っているだけでは、
笑える芝居はできないのだ。演技がヘタでも、しゃべりがよく聞き取れなくてもい
い。天性、常識はずれのエネルギーを持つ天然ボケの役者が思う存分勝手
気ままに働いて、はじめて笑いがハジけ、爆笑が生まれる。その天然ボケが、
まさにエメルソンなのだ。

 エメルソンの常識はずれのスピードと、ファウルをもらえないくせにオーバーに倒
れる無駄な演技力、あれがないレッズの試合が何と意外性がなく、おとなしい、
味気ないことか。田中達也もそこそこ頑張っていたとしても、やはり優等生が
必死で教科書通りのサッカーをやっているようなイメージは拭えない。
天然ボケの能力のない新劇俳優たちが、いくら綿密な演技プランを立てて
一生懸命コメディアンを演じようとしてもちっとも面白くならないのと一緒。
だいたい、エメ抜きではスリルとサスペンスがない。
 永井も、どうしてあんなにつまんないんだろ。FWなんだから、わざわざ後ろまで
ボール取りにくる必要ない。それよりちゃんと前で張ってて、ここぞという時に決め
てくれればいい。爆発力も演技力もないくせに、ちゃんとした芝居を見せて
客に感心してもらおうとする、セコいコメディアンみたいなやっちゃ!

 ゼリッチもヒドいな。来た時の売り文句が、「パスも出せるDF」だったはずなの
に、判断力は鈍いわ、動きはトロいわで、うかつに前にパスを出されるとインターセ
プトされそうで怖くてしょうがない。かといってバックパスされても、ますます怖
い。共演者へのツッコミがうまいコメディアンのつもりで呼んだら、ろくに掛け合い
もできなかったようなもので、この程度の外人選手を使うなら、もっと日本人使って
育てるか、ギド・クラスを連れてくるか、どっちかにした方がいい。 
  それにしてもFC東京にまた負けるとは、ホントにシャクにさわる。頼むぞ、エメ
ルソン、今度はこの試合前に出場停止なんてドジなことはやんないでね。
ま、そういうとこも「天然ボケ」のひとつではあるのだが。





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山中 伊知郎(ヤマナカ・イチロウ)
昭和29年、東京生まれ。
早稲田大学法学部卒。
18歳からハゲはじめ、頭を剃る。
「スケバン刑事」の脚本家、テレビ番組の構成作家などを転々とした後、
フリーライターに。
関根 勉率いる劇団「カンコンキンシアター」の一員でもある。

TBSラジオ
「永六輔の土曜ワイド」にもレギュラー出演中。

主な著書
「関根 勤は天才なのだ」(風塵社)
「浦和レッズ至上主義」(風塵社)
「チョットいい犯罪」(図書新聞)
「頭髪のすべてがわかる本」(日本実業出版)

浦和市民であり、もちろん熱狂的浦和レッズファン。

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