COLUMNコラム
 

          
第50回 (2002年11月30日)
「福田の1トップを!」


■11月30日 ●0-1 対横浜・F・マリノス(駒場)

ついに福田にまとわりついている「悲運のストライカー」の「悲運」という看板は
最後まで取れなかった。

この日の試合は、まさしくJリーグスタート以来、
福田が歩んできた歴史を再確認させるような結果になってしまった。
ドーハの悲劇、2年連続ダントツ最下位、J2落ち・・・。
そんな、一つだけでも十分にショッキングな状況をいくつも味わった、
正直、苦渋に満ちた10年間。
せめてレッズの選手としてのリーグ戦最後の試合は、
それらをすべて吹き飛ばす「花道」になってほしかった。
私の願望としては、とりあえず「FW」として先発してもらう。
で、他の選手はゴール前に来たら、どういう状態であろうが福田にパスを出す。
それをたとえ入ろうが入るまいが、福田が決める。
勝っても負けても別に大きな影響がないのであれば、
この試合は
「福田に最後の点を取ってもらう試合」
として割り切ってしまってもよかったのではないか。
決してMFでの先発がいけないというわけではないが、
観客の多くは、あるいは最後になるかもしれないレッズのFWとしての福田を見たかったろう。
背番号「9」が記された巨大な横断幕が掲げられ、
キックオフとともに、レッズ・サポーターからはゲットゴール・フクダのコール。
時計ではかってみたら、3分以上も続いていた。
だが、ボジションはもはや今年の定位置となった中盤の底。
どこかチグハグさは拭えない。
こうなったら、流れの中で得点するのは難しいとしても、せめてFKか、
できたらPKを取って福田が蹴るシチュエーションになってほしいかった。
PKでも1点には違いない。
100得点はできなかったが、福田には、
せめて最後の試合、得点を決めてレッズのユニフォームとお別れしてほしい。

前半は、まったくそういうチャンスらしいチャンスが来ない。
福田もまた、ゴール近くになってボールが来ても、すぐまわりにパスを出しちゃうのだ。
「フクちゃーん! 自分で打って」
後ろにいた女性ファンが絶叫していたが、
その声はどうも福田のもとには届いていないようだった。
見ていて、こちらもだんだんハラが立ってきた。
なぜ、これだけ連敗が続いても、性懲りもなく同じサッカーを続けているのだろう?
後ろで持ったボールをポーンとエメルソン、トゥットにつなげて、
後は前で何とかチャンスを作る、といったような。
前にも書いたように、若手起用にスイッチするか、はっきり
「福田お別れ試合」
と割り切ってエンターテイメントに徹するか、もっと観客が納得するテーマを見せて欲しい。
オフト監督は常々、
「1トップでも2トップでも3トップでも、サッカーには変わりがない」
と明言しているらしい。
ひとつに固定せず、状況に応じて変えていっていい、といってるわけだ。
ならば、この日は福田の1トップだ。2外国人は一休みしてただいて、
純国産チームで最後を飾ってほしい。CKを福田が蹴る、なんてことはなしにして、
その時は福田と井原はゴール前で張っていてほしい。
まァ、後半、福田がCKを蹴りに観客席の前にやってきたシーンでは、ドッと盛り上がったけど。
マリノスに1点を奪われたところでは、まわりの誰もが、
「やっぱりまたか」
という顔をしていた。
「きょうもまた1対0かよ」
とはっきり口にしている人もいた。
気がついて見れば、0ー1での負けが、すでに5試合連続。
みんな、それ、全部見てるから、「0−1慣れ」してしまっているのだ。
点が入りそうな予感すらしない。

ようやく後半も終わりに近くなって、観客の願望を肌で感じたのだろう、
福田が中盤から前線にポジションを移してきた。
それと同時に、また起こるフクダ・コール。
リーグ戦で聞くのはこれが最後かと思うと、改めて、PKでもいいから1点、の願望が強まっていく。
ちょうどレッズ・サポーターがいる方のゴールに攻めていたから、場所的にもピッタリだし。
うまくいかない。ゴールどころか、シュートも打てない。
前線で必死にボールを受けようとするが、十分にかみあわないままに試合終了のホイッスルだ。ついにこの試合も「花道」とはなり得なかった。

最後のスタジアム1周の後、福田から挨拶の一言があるのと待っていたが、
何もないまま、全員は引っ込んでしまった。
まだ天皇杯もあるし、福田自身の去就もはっきりしていないのだから話はできない、
という判断だろうが、少し寂しい。
野球でも、優勝が決まった後の消化試合で、功績のある選手が引退する際には、
公式戦の中でも「引退試合」の名目でセレモニーをやったりするではないか。
このまま引退試合なしで福田をレッズから去らせていいものだろうか?
来年のプレシーズンマッチあたりでやるのかもしれないが、
たとしたら、どうも時期が遅すぎて間延びしてしまう。
チームの先頭に立って歩いていた福田は、あきらかに泣いていた。
後で取材陣に対して
「最初はガマンしていたが、ガマンしきれなくなってジーンときた。
涙はJ2落ちした時だけと思っていたんだが」
と語ったそうだが、私も偶然、あのJ2落ちの時を思い出していた。
ゴールが決まった直後に駆け寄ってきた池田学はどうしてるんだろ?
あの時の相手だったのが、奇遇にも今季J2落ちが決まったサンフレッチェだったっけなァって・・・。
すでに光景は予想していたので、私は場内一周の中で、ゲットゴール・フクダの声を
聞いても目頭が熱くなることはなかった。
が、予想外のところで、突然、クグッと泣きそうになった。
マリノス・サポーターの井原コールなのだ。
選手たちがマリノスのサポーター席を通りがかった時、突然、
わき上がる井原コールとともに、スピーカーで、サポーターのリーダーらしき人物が
野太い声でこう一声放った。
「まだやめんなよ、井原!」
これは不意打ちでしたね。
考えてみれば、井原がマリノスのサポーターに声援を送られるのは当たり前なのだが、
これだけ、たった一言で、井原に対して大きなはなむけになる言葉はないではないか。
その一言で、井原の選手としての歴史や、サッカーに対する取り組み、
現役続行に対する執念をすべて認め、その上で、とことんまで自己を貫いてくれ、
と激励する気持ちが、100%伝わってくるではないか。
何か、『プロジェクトX』の泣ける回のラストシーンを見ているようで、ジーンとなってしまった。
一方で、これが福田には言えないのがツラい。「まだやめるな!」なのか、
「ごくろうさん」なのか、サポーターとしても、どう声をかけていいのかわからないのだ。

こうなったら、天皇杯、最後のタイトルを取って福田の「花道」とするしかないだろう。
その時はじめて、福田のラストシーンは完結する。
それにしても、終わってみたら年間順位は11位で勝ち点35。
よく頑張った印象はありつつも、去年の10位、勝ち点36を下回っている。
これじゃ、春先は調子よくても、
後はどんどん下がっていく阪神タイガースと一緒にされても文句はいえない。

2003年は、絶対に「Jリーグの阪神」などと呼ばれないよう、
最初も最後も充実したシーズンを送ろう。


(ご報告)
なお、まだナビスコカップ決勝が行われる前の10月下旬、
レッズが絶対にリーグ戦、ナビスコカップと二冠を取るだろうと信じて、
私はまたレッズ本の企画を立ち上げました。
驚いたことに、その企画が進行している間、ずーっと負け続けで弱ってしまったんですが、
とにかく本は出します。
『浦和レッズ絶対主義』(長崎出版)
と題し、12月下旬リリース予定ですので、よろしく!


インターメディア出版のHP(コラムに山中さんのページがあります)
「山中伊知郎コラム感想掲示板」


皆さんの感想が山中さんのモチベーションとなり次のコラムとなります。
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山中 伊知郎(ヤマナカ・イチロウ)
昭和29年、東京生まれ。
早稲田大学法学部卒。
18歳からハゲはじめ、頭を剃る。
「スケバン刑事」の脚本家、テレビ番組の構成作家などを転々とした後、
フリーライターに。
関根 勉率いる劇団「カンコンキンシアター」の一員でもある。

TBSラジオ
「永六輔の土曜ワイド」にもレギュラー出演中。

主な著書
「関根 勤は天才なのだ」(風塵社)
「浦和レッズ至上主義」(風塵社)
「チョットいい犯罪」(図書新聞)
「頭髪のすべてがわかる本」(日本実業出版)

浦和市民であり、もちろん熱狂的浦和レッズファン。

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