COLUMNコラム
 

          
第43回 (2002年10月19日)
「夢と狂乱の40日がやってくる」


■10月19日 ○v2-1 対名古屋グランパスエイト(埼玉スタジアム)

福田のヒーローインタビュー、よかったですねェ!
いいところで決まりましたね 、という問いに、すかさず、
「いや、負けないよ!」
ときたもんだ。珍しく感情がむき出しになっている一言に、
今のレッズの力強さを 感じざるを得ない。
「最後まで一緒に闘いましょう!」
の彼の決めゼリに、
「フクダ・コール」
で答えたサポーターの様子は、あうんの呼吸というか以心伝心というか、
目には見えない太い絆を感じて、嬉しくなって、
普段 はやらない福田コールを一緒になってやっちゃった。
そしたら、その拍子にメガネが落ちて、フレームがちょっと曲がってしまった。

まァ、そんなことはいい。
私もだんだん興奮してきましたよ。
ワールドカップの日 本代表ベスト16進出の時もそれなりには興奮したが、
それよりももっと体の中からわ き上がる興奮が抑えきれない。
このまんまいっちゃうんじゃないの?
これだ、これなのだ。1対0でグランパスがリード。
私と息子のいた席は正面の 屋根の下だったが、
それでも雨が振り込んでくるどしゃ降りの中、ゴール裏のサポーター席の真ん中上段のあたりは、ポンチョも着ず、平然と声をはりあげての応援を繰り返してる。
となりに座っていた息子は、
「あの人たち、ずぶぬれだよ。風邪ひかないかな」
そりゃひくかもわかんない。
でも、そんなことはどうでもいい。
自分たちさえつい てれば、この1点は跳ね返せる、という確固たる信念。
あの姿だね。あれを見ていて、絶対にひっくり返せると確信を持った。
晴天よりも、かえって雨の方がドラマチックでいいくらい。
帰り、少し曲がったメ ガネをかけて自転車で家まで行くのに、
雨は顔にビシャビシャあたるわ、メガネがグラグラして落ちそうで不安だわで、
エレー目にあったけど。
きっと優勝に向かうチームというのは、みんなこんな状態になるんじゃないのかな。
1点や2点くらい取られても、福田のセリフじゃないが「負けないよ」って感じで信じちゃって、
終わってみたら本当に勝ってる、みたいな。

エメルソンもエラかった。
時々、前の自分勝手なプレーが出て、後ろの席のオッサンが
「エメはジャマだ。もういらん! あいつは頭が悪い」
なんて怒ってたけど、連れらしい若い男が、
「でも、けっこう役に立ちますよ」
とフォローしてた。いいや、役に立つどころではない。よくやってくれた。
あんなにグランパスの選手に、ホモみたいにベッタリくっつかれて、
時には「抑えて抑えて」と止めたくなるシーンもあったが、
基本的には何とか感情を爆発させずに最後のVゴールまでもっていった。
彼なりによく感情をコントロールしてたと思う。
それといい、けっこうワンマンプレイが多かったのが、
まわりにパスを出すようになったのといい、ここ数試合で一気に彼が大人になったな、
と感じたのは、別に私だけじゃあるまい。
たった一つ、あのイエローだけは惜しかった。
23日のアントラーズ戦に出られないのは、かえすがえすももったいない。

あ、それで、もちろんそのアントラーズ戦も、鹿島まで見に行くことに決めた。
打ち合わせに行った会社に近い本郷のローソンで買ったら、
まだレッズ側の自由席が残ってたんで、一安心。
7時に始まって9時頃終了で、果たして東浦和まで終電で帰れるのかどうかは不安だが、
もうそんなこと言ってる場合じゃないっしょ。(女房が北海道出身なので、しばしば方言がうつる)
ホームの試合はもともと年間シートで持ってるとして、アウエーも、
後は近場しかないので、今のうちに私の分だけは押さえておく。
11月4日のナビスコ決勝はもちろん、
9日の国立のジェフ戦と24日の東京スタジアムのFC東京戦と。
息子には、後で
「ボクの分も買ってほしかったのに」
と怒られたが。
それにしてもFC東京の自由席って、なぜ大人で1200円と、あんなに安いんだろ?
優勝をホームで決められれば最高だが、
FC東京相手に決めるってのも、けっこう楽しいかもしれない。
正直、あそこの訳知り顔のサポーターの応援、私、嫌いだから 。
「ザマーミロ!」
と言ってやりたい気持ちも、ちょっとだけ、ある。

まいったなァ。
11月上旬までに、『これが原価だ!・パート2』という本をまとめなくちゃいけないのだが、
頭が「レッズ優勝」に占領されちゃって、そっちに容積を割けないかもしれない。
とりあえず、これから11月末のシーズン終了までは、
夢と狂 乱の40日間になるのは間違いなさそうだ。
ん?それにチャンピオンシップや天皇杯決勝まで加わると、70日くらいになっちゃうか。
これは疲れるなァ。モチベーションがもつだろうか?
何しろ、10年つき合ってて、初めての経験なのだ。
優勝争いの応援をしていると体や心にどんな影響が出 るのか、まったくわからないのだから。


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山中 伊知郎(ヤマナカ・イチロウ)
昭和29年、東京生まれ。
早稲田大学法学部卒。
18歳からハゲはじめ、頭を剃る。
「スケバン刑事」の脚本家、テレビ番組の構成作家などを転々とした後、
フリーライターに。
関根 勉率いる劇団「カンコンキンシアター」の一員でもある。

TBSラジオ
「永六輔の土曜ワイド」にもレギュラー出演中。

主な著書
「関根 勤は天才なのだ」(風塵社)
「浦和レッズ至上主義」(風塵社)
「チョットいい犯罪」(図書新聞)
「頭髪のすべてがわかる本」(日本実業出版)

浦和市民であり、もちろん熱狂的浦和レッズファン。

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