COLUMNコラム
 

          
第30回 (2001年11月24日)
「寿命を縮めない最終試合を見れる幸せ」


■11/24対名古屋グランパスエイト戦(最終戦)

 TBSラジオの「土曜ワイド」で1時まで高田馬場、早稲田近辺にいたお陰で、
駒場にたどりついたのが2時半頃。
で、ちょうど慌てて座席に座りかけた時、
近くの席にいたオジサンの2人組のこんな会話が耳に入った。
「こんな最終戦なんて、久しぶりだなァ・・・」
「毎年、寿命縮めるような試合は勘弁してほしいもんな」
ニコニコ笑顔で語るオジサン2人に、私はついうなずいてしまいましたよ。
今まで、あまりにいろいろありすぎた。

一昨年は、あの涙のJ2転落Vゴール。
でもって去年は歓喜のJ1復帰Vゴール。
ドラマもいいけど、そう毎年毎年じゃ疲れるもんねェ。
ああいう試合は4〜5年に1回くらいがちょうど体にイイ。
そういう意味じゃ、今年は平穏無事、しかもきょうの中身もスカッとした爽やかな試合で、
とっても後味が良かった。
例えてみれば、大晦日に熱燗を一杯やりながら
「紅白歌合戦」を見ているような心境かな。
一年の間には喜んだり悲しんだり、ハラが立ったり、ガッカリしたり、
いろんなことはあったけど、まァそれなりに楽しい一年だったな、
と気持ちよく行く年を回顧出来たというか。

今季限りのピッタ監督も、「勝てる監督」としては評価の分かれるところだが、
「紅白のディレクター」としてはなかなかイキな演出をしてくれた。
最終戦にはどうしても顔を見せてほしいと思っていた3選手を、
うまいタイミングで途中出場させて
くれた。
もっとも田中に関しては遅すぎたかな。
どうせエメルソンが歯痛で出られないのなら、一度先発で出してやりゃ良かったのに。
90分出て、はたして最後までスタミナが持つのか、あのネズミみたいなドリブルがやれるのか、
試して欲しかった気はする。
永井はともかく、勝敗度外視でいいんだから、無理してトゥットを出す必要もないでしょ。
ただ、福田の登場と渡辺の起用は、実になんとも、
私個人の「紅白」気分を思い切り盛り上げてくれたね。
特に福田の登場は、「紅白」の小林幸子、美川憲一のド派手衣装対決よりも、
ずっとずっと強烈だった。しかも、1点決めるもんなァ。客席の一部には、
「グランパスも、なかなかやってくれるじゃないか」
という声もなくはなかったが、まさかプロチームがそんなアマいことをしてはくれまい。
あれは確かに福田が、衰えを見せない本人の実力によって決めた得点なのだ。
ただ、トゥットのパスは、
「永遠のチームリーダー」福田に花を持たせたい、という愛をちょっぴり感じたけれど。
サポーターの、長い長いフクダ・コールも心地よかった。
私のすぐ後ろの席の若い男性客が、感極まって、
「フクダ! 来年も頼むぞ!」
 と叫んでたのは印象的だったな。

でも、それ聞いて、考えてしまった。
確かに来年もレッズのベンチに福田がいれば、チームとしては精神的支柱として頼れるだろうし、
アドバイサー役として貴重な存在にはなるだろう。でも、それで本人は満足できるかね。
私個人の願望としては、福田には甲府とか水戸とか、
J2の思い切り弱いチームに行って、正FWとしてそこをJ1に引き上げるくらいに強くしてほしい。
たぶんどっちもビンボーで福田に見合うだけの年俸を払えないし、難しいとは思うけど、
そこから先は、もう本人の「男のロマン」の問題だ。
渡辺の出番もたった数分だったが、スカッとした。
ずっと試合に出られなかった鬱積を爆発させるみたいに、とにかくよく動く。
ボールが来ようが来まいが、自陣から相手のゴール前まで、
引き金をひいた鉄砲の弾みたいな全力疾走。
もっともっと長く田中と渡辺をピッチで見たかったな。
「きょうの試合で、寿命が延びたよ」
ついそう言いたくなっちゃう、「癒し系」の一戦。
終わった後、選手がグランド内を一周している際、
オーロラビジョンにはサポーターたちの表情が大写しになっていたが、
その顔のひとつひとつの何と穏やかで幸せそうなこと。
去年も一昨年も、みんな泣いてたもんなァ・・・。


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山中 伊知郎(ヤマナカ・イチロウ)
昭和29年、東京生まれ。
早稲田大学法学部卒。
18歳からハゲはじめ、頭を剃る。
「スケバン刑事」の脚本家、テレビ番組の構成作家などを転々とした後、
フリーライターに。
関根 勉率いる劇団「カンコンキンシアター」の一員でもある。

TBSラジオ
「永六輔の土曜ワイド」にもレギュラー出演中。

主な著書
「関根 勤は天才なのだ」(風塵社)
「浦和レッズ至上主義」(風塵社)
「チョットいい犯罪」(図書新聞)
「頭髪のすべてがわかる本」(日本実業出版)

浦和市民であり、もちろん熱狂的浦和レッズファン。

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