COLUMNコラム
 

          
第21回 (2001年7月21日)
「 小野が去った後の全員攻撃サッカー」


■7/21対サンフレッチェ広島戦

 なかなかいい雰囲気だった。
オーロラビジョンを見ながら声援を送る駒場競技場の夜。
サポーターの主力部隊は広島に行ってしまったのだろう。
いつものような大旗を翻しての派手な応援はなく、太鼓も使われてはいたものの、
あくまでごく一部で、どこか近所の家族連れが夕涼みにやっさてきているような
アットホームな匂いの強い3千人あまりの集団だった。

普段の駒場を、唐辛子の強烈に利いたキムチのような刺激だとしたら、
きょうはサラッとしたキュウリのヌカ漬けくらいかな。                  
遠くに見える映像を頼りに一喜一憂しているわけだから、
いつもの駒場にはありがちなキツい野次もない。
どちらかといえば静かにレッズを愛する人たちが、夏の暑さを忘れて、
まずは小野のレッズ最後の試合を見知らぬ仲間たちと共に味わい、
しみじみと彼と生きた3年半を回顧しようという形だ。いいな、こういうのも。
夏のアウエーの時、年に2、3回はこんな形でスタンドを開放してほしい。

試合の流れ自体が、観客の望んでいる流れにけっこう沿っていたのもありがたかった。
小野の得点シーンは残念ながら見られなかったものの、永井の点といい、
田中の2点目といい、小野の絶妙のパスがあらばこそのゴール。
遠くに座っちゃったためにやや細かい部分が見づらかったものの、
改めてみせる小野の才能の輝きには敬意を表するしかない。

■小野の去った後の攻撃

 小野が去った後のレッズの進むべき道も、何となく浮かんできた気はする。
とりあえず、ジュビロのように、固く守って鋭く攻撃を加える
バランスのいい強豪チームには、半月ちょっとの期間で変身できるはずがない。
だったら、どうせ攻撃陣は粒が揃っているのだから、少々の守りのスキには目をつぶって、
いったいどこから攻めてくるかわからない
騎馬軍団と砲兵と歩兵が一緒くたになったようなチームにしていけばいいではないか。

その意味で、岡野のサイドバック起用は大ヒットだった。
守りに入って、ゴール前のヘディングの競り合いなんてことになると不安はある。
でも、そんなこと言い出したら、レッズのDF陣そのものが不安だらけなのだ。
きょうだって、けっこういいとこ、みせてくれた。
サイドバックがいつの間にか一番前走ってゴール前に迫ってくるシーンが
何度もあるなんてのは、岡野ならばこそのエキサイティングの魅力で、
ああいう選手が後ろにいたら、見てる人は楽しい。

ドリブル小僧・田中もいいな。小野のパスを受けての処理もいいが、
自分ひとりでボール持って相手DFを抜いてっちゃう独自の個性も光る。
トゥット、アドリアーノがケガで途中交替したのは心配だとしても、
まだ福田や福永や、個性派攻撃陣が後ろに控えてるからね。
井原だって、きょう見てる限り、わざわざ攻撃参加にやってくるファイトが残ってたではないか。
どうも判断力に不安多々の西野に替わり、センターバックに山田を置き、
両翼が岡野と内舘でいけば、これはスピード溢れる騎馬軍団の活躍が大いに期待できる。

駒場の場内では、ケーブルテレビの音声が流れていて、
アナウンサーや解説の渡辺、それにレポーターの河合貴子さんの声も聞こえて、
それもまたグッド・サービスであったが、ただひとつ、アナウンサーのこの言葉は気になった。
「レッズのサポーターの中には、阿部に小野の後継者になってほしい、
と思っている人が多いようです」
何度が出た言葉なので、ますます気になった。
はっきり言って、阿部に限らず、小野に替われるような天才的選手がいるわけがない。
今まで小野が果たしてきた、司令塔として決定的なパスも出しつつ、
自分で得点も決めて守備もする、なんてポジションは「後継者」なんてどだい存在しないのだ。
だからこそ、これからは誰が攻撃の起点になるということでなく、
どこからでも飛び出してゴールのチャンスを作れるチームにこそ変身しなければならない。
阿部も、小野みたいになろう、なんて無理に背伸びをせずに、
自分の能力で出来る範囲のベストを尽くせばいいのだ。
退場者が2人、3人と出て、たとえ選手が9人、8人になってもなお攻撃を続ける
ようなサッカーをぜひ見せて欲しい。


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山中 伊知郎(ヤマナカ・イチロウ)
昭和29年、東京生まれ。
早稲田大学法学部卒。
18歳からハゲはじめ、頭を剃る。
「スケバン刑事」の脚本家、テレビ番組の構成作家などを転々とした後、
フリーライターに。
関根 勉率いる劇団「カンコンキンシアター」の一員でもある。

TBSラジオ
「永六輔の土曜ワイド」にもレギュラー出演中。

主な著書
「関根 勤は天才なのだ」(風塵社)
「浦和レッズ至上主義」(風塵社)
「チョットいい犯罪」(図書新聞)
「頭髪のすべてがわかる本」(日本実業出版)

浦和市民であり、もちろん熱狂的浦和レッズファン。

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