COLUMNコラム
 

          
第16回 (2001年6月20日)
「かえって危機感が高まる」


■6/16、対清水エスパルス戦

 録画中継はいけません、録画は。
 NHK衛星で当然ナマ中継があると思って、朝、ラテ欄を見たら、
やるのは3時間遅れのテレビ埼玉の録画中継だけ。
ついニュースを前に見てしまったら、レッズがVゴール負けしたのを知ってしまった。
  これはツラい。勝っていれば、さて、どう決めたのかを見る楽しみがあるが、
負けたんじゃねェ。
何も知らないまま見たかった。
本当は日本平に行けばいんだろうが、仕事もあってもそう簡単にはいかないしね。
 
ただ、その負け方は、見る前に想像していたのとはだいぶ違う。
トゥットもいないし、たぶん小野ひとりが右へ左へと動き回ったあげく、
敵の2、3人にマークされて有効なパスもなかなか出せず、
決め手らしい決め手もなく無得点のままズルズルといってしまったんではないか、
と思ったのだ。
  テレビで見た現実はぜんぜんそうじゃない。
  おいおい、これがいつものレッズと同じチームかよ、と首ひねっちゃうくらい、
積極的な「いいチーム」になっているのだ。
ひょっとして、こういうのも「コンフェデ効果」というべきなのかな?
 小野が自信を取り戻しただけではない。他の選手たちも、守備から攻撃へと、
その展開がやたらと早いフランスチームの戦いぶりなんかを見て、
「よし、オレたちもああやろう」と突然目覚めちゃったのかもしれない。
いいものを見て、そのマネをしようとする、これはスポーツだけでなく、
どの世界でも通じる進歩への第一歩だ。
今をときめく爆笑問題だって、最初はツービートの模倣から始まっている。
 
■私の持論

それにしても、やればできるじゃないか。
山田も、阿部も、石井も、内舘も、土橋も前に出る気になればどんどん出てこれるのだ。
なぜ駒場のホームの試合で、後ろに張り付いたままじっと何かを待ちつづけているのだろう?
 もちろん相手DFを小野が引きつけている間にスルスルッと
上がってくるパターンが多かったにせよ、今までの試合はそれすらほとんどなかった。
  ワンタッチパスがあったのと、バックパスが少なかったのもきょうの試合の大きな特徴だ。
みんなが前に行く気になってると、如実にそのあたりの数字に表われる。
  阿部から永井、小野から永井、永井からアドリアーノなんてラインにも、
流れるような美しい攻撃が何シーンもあった。

  後半、どちらかというとエスパルスのペースになった後も、
決してガクッと落ちたわけではない。さすがに積極的な攻撃は陰を潜めたが、
今度はいつになくDFのバランスのよさが目についた。
最初、いきなりアレックスに安藤が抜かれてヒヤッとさせられたけど、
どうにかその後は危なげなく守備をこなしていたし、池田学がマメに敵の攻撃の芽をつんでいた。
  正直な話、見ている側としては西野が後ろにいるより
池田がいる方が安心感がある。テクニックとかスピードとか以前に、
あのガッチリとした体格と鉄仮面みたいなルックスが「壁」にふさわしいキャラクターなのだ。
どうの西野見てると、「悩み多きインテリ学生」みたいでしょ。
たとえ見た目だけのコケオドシでも、DFはコワい顔の選手がいい、
っていうのは私の昔からの持論だ。
 
攻撃にも果敢さがあり、DFも、たとえ波状攻撃をかけられてもギリギリのところで
しのぐだけのバランスがあった。
チッタ監督も田中、福田、福永。路木とタイミングよく新しい選手も投下していった。
その福田も、惜しいシュート打ってたし。つまりレッズとしては
「出来のいい試合」だったのだ。
  だが、たったひとつ、決定的なマイナスポイントがあった。
そんなに出来がよかったのにも関わらず、結局は勝てなかったということだ。
  トゥット、ドニゼッチがいなかったのが、それほどの不利になっていたとは思えない。
トゥットがいなかったからこそ、
「自分たちがやらねば」と後ろの選手が積極的に前に出ていたとも言えるのだ。
そして何より、「大黒柱」小野は、いた。
  レッズにとってはほぼベストの試合といっていい。
それで負けるというのは、エスパルスクラスの上位チームには、
今後もまともにやってちゃほとんど勝てない、
という恐るべき真実を突きつけられたことにほかならないのだ。
  しかも、もうすぐ小野がいなくなる。
  私、心配性なのだ。まさか1999年の悪夢の再現はないと思うが・・・。
ヒドい試合で負けた時以上に、きょうみたいな負け方をした時、
ジワジワと真綿で首を締め付けられたような危機感が高まっていく。
  小野抜きで、きょう見せてくれたような積極的な攻撃が展開できるのか?
トゥットひとりに頼るようでは今後の展望はクラい。

  頼むよ、大切なワールドカップ年をJ2で迎えるなんてみっともないことはしないでね! 
きょうくらいのレベルの試合を下位チーム相手に出来れば、
確実に勝ち星を重ねられるはずなのだから。


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山中 伊知郎(ヤマナカ・イチロウ)
昭和29年、東京生まれ。
早稲田大学法学部卒。
18歳からハゲはじめ、頭を剃る。
「スケバン刑事」の脚本家、テレビ番組の構成作家などを転々とした後、
フリーライターに。
関根 勉率いる劇団「カンコンキンシアター」の一員でもある。

TBSラジオ
「永六輔の土曜ワイド」にもレギュラー出演中。

主な著書
「関根 勤は天才なのだ」(風塵社)
「浦和レッズ至上主義」(風塵社)
「チョットいい犯罪」(図書新聞)
「頭髪のすべてがわかる本」(日本実業出版)

浦和市民であり、もちろん熱狂的浦和レッズファン。

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